Androidアプリを別開発者アカウントに移行する

こんにちは。アプリ開発グループのdaxです。ニコニコ漫画、読書メーターのAndroidアプリ開発を担当しています。

2021年、ニコニコ漫画と読書メーターではAndroid/iOSアプリの配信を行う開発者アカウントを株式会社ドワンゴからブックウォーカー所有のものに移行しました。
この記事ではAndroidアプリについて、開発者アカウント間のアプリ移行の方法と実際の作業中に気づいた注意点について紹介したいと思います。

なおこの記事の情報は2021年12月時点のものとなります。
記事の公開後に移行方法が変更されている可能性もありますので、まずは必ずPlay Console ヘルプ内の別のデベロッパー アカウントへのアプリの移行のページをご確認ください。

1. 事前準備

1-1. 移行を行うアプリの状態確認

対象のアプリがポリシーガイドラインを遵守していることを確認します。

1-2. レポートのダウンロード

売上レポートや収益レポートなど、移行先に引き継がれないレポートをダウンロードしておきます。
長く公開されているアプリでは、月次レポートなどの数がかなり多くなります。

1-3. 移行先アカウントの準備

1-3-1. 開発者アカウントの有効化

アカウントをPlay Consoleに登録し、25ドルの登録料を支払います。
この登録料支払い時の取引IDが移行リクエスト時にも必要となります。

1-3-2. お支払いプロファイルの作成

アプリ内課金を使用しているアプリの場合、移行先アカウントに支払い情報の設定が必要となります。
売上の振込先となる口座の情報などを設定するわけですが、ここでうっかり忘れてしまいがちなのが「アメリカ合衆国の税務情報」の登録です。
税務情報が未設定の場合、売上が振り込まれなかったり税金が二重に徴収されてしまったりします。

Play Consoleにも警告は表示されるのですが、そのタイミングはアプリの移行後にその月の売上が確定したあとでした。
急いで登録しようにも、普段アプリの開発ばかりやっていると触れることのない入力項目が多く、登録すべき情報を集めるのに苦労します。余裕を持って事前に、忘れず登録するようにしましょう。

1-3-3. 購入を検証するサービスアカウントの作成

こちらもアプリ内課金を使用している場合の準備になります。
バックエンドサーバからGoogle Play Developer APIで購入情報の検証を行っているアプリでは、移行後の購入検証に使用するサービスアカウントを作成する必要があります。
作成自体はPlayConsoleの「APIアクセス」から案内に従って作業すれば問題ありません。

しかしここで注意したいのが、Play Consoleで付与した権限がサービスアカウントに反映され、実際にDeveloper APIから購入情報の取得ができるようになるまで数十分から1日程度の時間がかかることがある点です。
アプリの移行が完了したあと速やかに課金機能の再開ができるように、サービスアカウントの作成も移行申請前に十分な余裕を持って行っておくべきでしょう。

2. 移行リクエストの送信

2-1. アプリ内課金機能の一時停止

申請後に実際にアプリが新しいアカウントに移行するタイミングは開発者側で制御できません。
そのためニコニコ漫画では「移行の瞬間に操作を行っていたユーザーの課金処理に失敗した」などのトラブルが発生する可能性を考慮して、移行作業中はアプリ内課金機能を一時的に停止しました。

2-2. 移行をリクエストする

次の情報をフォームから入力して申請を行います。

  • 現在の所有者の氏名
  • 移行先アカウントのメールアドレス
  • 移行先アカウントの取引ID

読書メーターのアプリ移行では、この取引IDの形式がPlay Console ヘルプに書かれているものと異なるという問題が発生しました。ヘルプには取引IDの形式について次のように書かれています。

通常、登録取引 ID は次のいずれかの形式になります。

・01234567890123456789.token.0123456789012345
・0.G.123456789012345
・Registration-1234ab56-7c89-12d3-4567-8e91234567f8
・PDS.1234-5678-9012-345

しかしヘルプに従ってRegistration-1234ab56-7c89-12d3-4567-8e91234567f8の形式で取引IDを入力しても受け付けられず、正しい取引IDの形式は先頭のRを小文字にしたregistration-1234ab56-7c89-12d3-4567-8e91234567f8でした。

2-3. 移行リクエスト送信後の確認メールに返信する

リクエスト送信の数十分後、移行先のアカウントに15% のサービス手数料ティアに関する条件について把握しているかを確認するメールが届きました。
48時間以内に返信しなければ自動的に了承したものとみなされるようですが、時間の短縮になるので特に理由がなければ返信を行いすぐに作業を開始してもらいましょう。

以上の手順完了後、問題がなければ2営業日以内にGoogle側の移行作業が完了し移行先のアカウントでアプリが公開されます。

3. 移行完了後の作業

3-1. アプリ内課金の再開

アプリ内課金の検証を行うバックエンドサーバで使用するGoogle Play Developer APIの認証情報を移行先の開発者アカウントに紐付いたものに更新します。
設定が完了したらアプリ内課金機能を再開させます。

4. おわりに

以上、Androidアプリの開発者アカウント間移行の方法と注意点についてお話しました。
この記事がこれからアプリの移行に挑戦する方の参考になれば幸いです。