サービスデザイン部 クリエイティブ課 デザイナーの宮下です。「ニコニコ漫画」「次にくるマンガ大賞」等のUIデザイン・グラフィックデザインを担当しています。
今回は学生時代の夏休みの一研究的な感じで、「あの看板」をデザイナー目線で考察してみました。
「あの看板」とは?
「あの看板」とは「きぬた歯科」の看板です。メディアなどで取り上げられる事もある有名な看板なので、ご存じの方も多いのではないでしょうか?
観点
今回は学生時代の一研究を思い出す。という事で以下の観点で看板を観察し考察していきます。
- 掲載環境
- 表示情報
- 色
- 考察
観察と考察
「きぬた歯科」の看板は街中でいくつも見つけることができました。その中でも考察が捗りそうな4つの看板について書いていきます。
それでは見ていきましょう!
エントリーNo.1
まずは最もシンプルで、ノーマルな状態の看板からみていきます!
掲載環境
交通量少なめの道路沿い。歩行者用の信号機の前に設置。
表示情報
病院名/正面を向いた笑顔の人物写真/インプラント/住所/電話番号
色
白/マゼンタ/黄色/黒/青
考察
マゼンタの色面が少し離れた位置からでもかなり目立っていました。笑顔で正面を向く男性と目が合います。
看板に近づき視線を逸らせば「きぬた歯科」「インプラント」のコントラストが強い文字が視界に飛び込み、文字情報が少なくとも直ぐに、これが「歯科医院の看板」で「得意分野がインプラント」だと理解できました。
歯科医本人の写真と並ぶ「インプラント」の単語から、歯科医の施術に対する並々ならぬ自信がうかがえ、他の言葉が無くても「インプラントが得意なんだろうな」と強み想像することができます。
また、歩行者の視線の高さに合わせて看板が設置されていることから、信号待ちで無意識に看板を読んでしまう効果もあります。
もちろん車に乗った状態でも、住所までがしっかり読めるフォントサイズになっていました。
エントリーNo.2
続いてはそっくりなポーズで横並びになっている2つの看板です。
掲載環境
交通量の多いバイパス沿い。信号機の前に設置。
表示情報
病院名/正面を向いた笑顔の人物写真/インプラント/住所/電話番号
色
白/マゼンタ/青
考察
こちらも離れた位置からでも難なく視認できる色とサイズ感です。
そして隣に全く同じポーズで同じような看板が設置されていることから、さらにインパクトが増しています。
大・小の男性が同じポーズでこちらを見つめてきます。
同じような2つのデザインが並んでいると、無意識に比較してしまうのがデザイナーではないでしょうか?
まず人物写真の明るさに注目です。「きぬた歯科」の看板は笑顔である事が一目で視認できる大きさと被写体の明るさによって人物が際立ち求心力が強いです。
また文字の処理は強いコントラストと大きさ。文字に変形がかけられていないので視認しやすく感じます。(カタカナに多少の平体はかかっていそうですが、明らかな変形は感じません)
こちらも時速約50kmの車内から一瞬で読み取れる文字量となっています。明るい笑顔が脳裏に焼き付いてきました。
すごい。
エントリーNo.3
他社をも巻き込むインパクト。まさに広告を感じる看板。
掲載環境
人通り、交通量共に多い交差点。こちらも信号機の前に設置。
表示情報
病院名/正面を向いた笑顔の人物写真/インプラント/住所/電話番号
色
白/マゼンタ/黄色/黒
考察
ここは看板激戦区です。四方八方を看板で囲まれている中、やはり笑顔の人物と、コントラストの強い文字。黄色い色面が数ある看板の中でもひときわ存在感を放っています。
一番注目いただきたいのは、「きぬた歯科」の真上にある青い看板です。こちらは「アパマンショップ」の看板ですが記載されている文言にはなんと・・
「きぬた歯科より目立ちたいけど、歯が立ちません」
アパマンショップがきぬた歯科について明記しています。これはすごい。うまいことやった。(言った!)
視覚的に目立つ事を諦め、あえて「きぬた歯科」を引き立てる文言で相乗りしています。掲載場所を利用し、お互いがWinWinになる看板。。。「広告」を感じる瞬間でした。
すごい!
エントリーNo.4
最後は個人的にお気に入りの看板です。
掲載環境
高速道路入り口付近の交通量が非常に多い交差点。
表示情報
病院名/人物写真/インプラント/所在地/煽り文言
色
黄色/黒/赤
考察
こちらも沢山の看板が密集する場所です。今回は複数枚「きぬた歯科」の看板が掲載されています。
少し距離がある車内からも十分に目視できる黄色い看板。
交通量が非常に多いこの場所の看板には、住所や電話番号などの記載はなく、さらに文言が絞られています。
文字のコントラストは引き続き強く「いま来てね!!」の緊急性を感じられる煽り文言。こちらへ呼びかける男性の写真のインパクトに視線を釘付けにされました。
この場所では写真右側の赤い看板にややインパクトは押され気味かと思いきや、それは大きなまちがいでした。
看板に近づくにつれ男性の顔が横に複数連なる看板がみえてきました。
横にならんだ男性の顔、その隣には「安 全 運 転 ね」の文字が・・
もはや歯科医院の宣伝でもインプラントの宣伝でもありません。歯科医の男性が安全運転を呼びかけています。
インパクトがある看板だからこそ、交通量の多いこの場所ではドライバーの安全に配慮していると考えると好感度も爆上がりです。
すごい!!
まとめ
今回はインパクトの強い「きぬた歯科」の看板に着目し、考察してきました。
看板という一瞬しか目に入らない広告媒体において、極限まで伝えたいポイントを絞り、インパクト強く訴求する。いざインプラントが必要となった時、真っ先に思い出す歯科。それが「きぬた歯科」。
その場所を通るすべての人間に対し、確実に「社名」と「強み」を意識させる事が目的というのが、はっきりと伝わる看板でした。
同じトンマナ・情報を繰り返し訴求し、強烈でありながら遊び心も感じられる看板は人々の記憶に残り、話題になることでさらなる広告効果を生み出す。そういった戦略も想像できます。
デザインの目的を意識し、戦略的に設計する事はとても重要です。
自分が作っているものは、きちんと目的を果たせるデザインになっているか。改めて自問自答し、デザインと戦略の重要さを感じる時間となりました。
最後に
自分の興味・関心・好きな事を自由に発信したり、「好きな気持ち」を大切にする風土がブックウォーカーにはあります。自分や他人の「好き」を大切にし、業務に活かしてみませんか?